2024.01.11 |働くお母さんに、 ささやかな感謝を。〜今治タオル子育て支援制度〜

働くお母さんに、ささやかな感謝を。

〜今治タオル子育て支援制度〜




今治タオル工業組合では、2019年から「今治タオル子育て支援制度」を導入しています。組合員企業に就労し、社会保険適用を受ける女性労働者で、同居する中学校卒業までの子供を育てる方々を対象に、一人月額10,000円を支給します。ただし、本支援金の活用を希望する組合員企業と、組合がそれぞれ支給額の半額を負担するというものです。現在、今治タオル工業組合80社中、19社61人が対象になっています。今回のIMABARI LIFEでは、この子育て支援制度について取材しました。

「正社員になったら育児ができない」
娘の言葉にハッとした

まずは、この制度の発案者である今治タオル工業組合の木村専務にお話を伺いました。
木村忠司専務理事(以下、敬称略):今治タオルは、女性に支えられている産業なので。タオルメーカーに所属する社員のうち59.8%が女性。歴史的にも、家事育児をしながら内職でタオルの仕上げに携わり、繊維産業を多くの女性が支えてきました。近年、人手不足が激しくなるなか、ますます働く女性の参入が求められています。
この時期に発案されたきっかけは?
木村:娘が子育てしていまして、(当時)小3と小1の子がいるんですけど、会社勤めをしていて、パートから正社員になる話が来た時に、『正社員になったら育児できなくなる』と言って断ったのです。それを聞いて、子育てって大変なんだと今更ながら思いまして…タオル業界は、これまでもずっと女性に支えられた産業なのに、我々男性はなにも考えずにやっているなと。
ご自身の子育てのときは気づかなかったんですね(笑)。でもそれだけ時代が変わり、人々の意識も変わってきたということでしょうか。
木村:そうですね。核家族化が進んでいることもありますし、男性も子育てしている、という議論もあるのですが、そこまで考え始めると行政の役割に入ってしまうし、どこかで線引きをしないといけない。女性に支えられてきた業界なので、何か女性を支援する制度が作れないかなと。
当初は業界に保育園をつくる構想まであったのですが、タオルメーカーの場所が各所に点在しているため、一箇所につくるのが難しいと断念しました。せめてものささやかな気持ちとして、働いているお母さんに月々1万円支援しようと。1万円でなにができるかと言ったら、たいしたことはできないのですが、ささやかなご褒美で、頑張ってね、ありがとうという気持ちとして。
もう一つ、家事代行サービスをなんとかしたいと、(株)ニチイ学館さんへ年末大掃除をするときなどに使える優待制度もあるのですが、現状あまりこれは使われていないので、ぜひもっと活用してほしいですね。

お昼休みも、家事や育児のために
家に帰っています。

それでは、実際に制度を導入しているメーカーさんのお話を聞いてみようと、渡辺パイル織物株式会社にやってきました。渡邊千歳代表取締役社長と、この制度を利用している社員お2人にお話を伺いました。


いつからこの制度を適用されているんですか?
渡邊千歳代表(以下、敬称略):2019年7月から。この制度が始まってからすぐだったと思います。今治タオル工業組合からのアナウンスがあって、すごくいい制度だなと思って始めました。
もともと女性社員は多いのでしょうか?


渡邊:タオルの仕上げ部門や、事務職などは女性が多いですね。仕上げさん…出来上がったタオルを検品して、箱入れをして、シール貼ったりとか、出荷までの作業をする職種は、女性が多く、他のメーカーさんでもそうだと思います。こちらの田中は事務職で、高橋が仕上げになります。

仕上げを担当する高橋さん

お2人は、先ほどお昼休みにお家に帰られていたと聞きましたが、毎日帰られるんですか?
田中理江さん(以下、敬称略):近くなので。車で10分もかからないくらい。
高橋美亜さん(以下、敬称略):お昼を食べたり、ちょっと洗濯物をその間にやってしまったり。夏とかすぐ乾いたりするんで。子供が部活とかしていると洗濯物の量がかなり多くて。
大変ですね。出社日は月〜金ですか?

事務を担当している田中さん

高橋:土曜日出社の日もあります。時間は8時~5時です。
お子さんはおいくつですか?
田中:上の子が高校2年生の女の子で、下の子が中学校2年生で男の子です。
高橋:上が高校1年生で、女の子。下が中学2年生で男の子です。田中さんの息子さんとはクラスも同じで出席番号も近くて。親も同級生で年齢が一緒なんです。

高校1年生と中学2年生のお子さんがいる田中さん。

ママ友でもあるのですね。こちらに入社されてからは何年目ですか?
田中:8年目です。
高橋:6年目です。
お2人とも、お子さんが小さいときから働かれてるということですね。
高橋:はい。場所的にも近いですし、働きやすい職場なので。
渡邊:私自身が、子どもが3人いて、子どもが小学校、中学校のときから働いているので、子育てをしながら働くお母さんの気持ちも分かるし、部活とか学校行事なんかは優先してほしいと思って、有休も取りやすい環境にはしています。お子さんが急に熱出したりしたときなどは、一緒に働いている人たちがカバーし合って、うまく連携できるようにしています。

育児で鍛えられている人は、
時間の使い方が上手

今回の支援制度ができて、どうですか? 率直な感想は。
田中:嬉しいですよね。1万円お給料が増えた感じですよね。
高橋:私たちのことも考えてくれてるのかなって思えて、ありがたいですよね。
渡邊:なかなか他にはない制度なので、長く務めてもらえるかなという気持ちはちょっとあります。
今治全体で言うと、働くお母さんは多いのでしょうか?
渡邊:多いですね。いまはもう働いていない人のほうが少ないかなと思います。もともとやってきた仕事に復活する人もいるし、できる範囲でパートさんから始めて、社会に関わっていくという。私自身も、早く社会に関わりたいなと思っていました。子育てってどうしても閉鎖的なので、子どもとは対話できても、外の人と話すことも少ないし、今日1日宅急便の人としか話してなかったなということもあったりしたので。
実際、タオルづくりの現場には女性の働き手が必要ということもあるのでしょうか?
渡邊:それはあると思います。やっぱり、30年前は500社ぐらいあったので、それに関わる加工場とか工場が町にたくさんあって、そこで働く方、内職をする方、たくさんの女性が働いてたと思います。あまり女性ばかり子育てする前提なのも良くないとは思いますが、実際、女性は子育てを担当することが多い分、時間の配分というか、段取りがすごく上手で、朝、子どもの世話をして、出勤して、お2人はお家にお昼に帰って夕食の段取りもしているでしょうし。帰ってまた子どものご飯作ったり、塾の送り迎えをしたり、そういう1日の流れを上手に使うのに慣れている。それが仕事にも活かされてるんじゃないかなと思います。
本来、男性も育児に関わって欲しいところですが…。
田中:うちは小さい頃からわりと協力的でした。子どももお父さんに懐いていましたし、いまでも仲いいです。
渡邊:私の時代は、もう男は働いて、女は家みたいな感じだから、うちの夫(故・渡邊利雄氏)は何にもしませんでしたけどね。
一同:(笑)
渡邊:子どもには優しいし遊んだりはしてくれるんですけど、お世話したり、ご飯作ったりとかは何もできなかったです。「今日はちょっと出かけるから子ども見ておいて」と言ったら、本当に見ているだけで、お風呂も入れていなくて、洋服のまま寝てたんで。本当に見てただけだなと思って(笑)。
以前、「TOWEL STORY」でお話を伺ったので、想像できます(笑)。先代社長は、タオルのことばかり考えてらっしゃったというお話でしたので。
渡邊:そうなんです。子育て大変でした。
だからこそ、いま母親の気持ちが分かるということですよね。子供の成長に合わせた働き方もできるのでしょうか?
渡邊:お子さんがもっと小さい方は、パートさんで来られてて、9時~3時とか、時間を短縮して働かれて、高学年になったらもう少し時間を増やしますって言ってくださるので。
就業時間を増やしたいと思ったら増やせるんですか?
渡邊:この方がもう少し長い時間働いてくださったら会社のためにもなるなと思ったら、まず私の方から提案します。
男性の育児休暇はあるんですか?
渡邊:男性ももちろん取れるんですけど、男性はまだ20~30代の若い層が多いこともあり、独身が多いので、取る方はいまのところはいないですね。
社員さんは何人ぐらいいらっしゃるんですか?
渡邊:社員は25人です。女性は全体で14人いて、そのうちパートさんが6人です。
田中:すごく働きやすい会社なので、8年も働いてきましたし、これからも続けていこうと思っています。子どもたちが部活動してるので、やっぱり週末とか試合とか、そういうので子どもの歯医者や送り迎えなどで急にお休み取りたいときも対応していただけますし。
渡邊:天候で試合の予定が変わったりするしね。
田中:学校の行事とかも、雨だったら延期になったりして、雨の場合は会社来て次の日お休みもらいますとか、そういった希望も臨機応変に通してもらえるので。私も助かっています。
皆さん、お子さんがいらっしゃる感じですかね。
渡邊:そうですね。全員いらっしゃいますね。独身もいますけど、それ以外は。クリスマスマーケットのイベントなどもやっているので、皆さんとても仲がいいです。

年に1回のクリスマスマーケットには、地元の方が1000人くらい来場

クチコミでいい評価をもらえると、
嬉しくなります

仕事はやりがいありますか?
高橋:はい。きれいに製品になって、出荷していくのを見るのは楽しいですし、SNSなどで、お客様の声を見たときには嬉しく思いますね。ふるさと納税でも出荷しているのですが、クチコミで「きれいに包装されてました」など、いい評価をもらっていたりして。そういうのを見たら、ああ良かったって。
田中:原料から仕入れて、製品になるまで見られるというのが他にはないところだと思います。メーカーの方の希望したものが形になっていくのを見ていたら、すごいなっていうのはあって。タオルだけではなく、うちはアパレルの生地とか服とかもやっているので。
すごいブランドのお仕事されてますもんね。
渡邊:私もここで働いていることを誇りに思って来てくださるのが、一番嬉しいなと思っています。
仲良さそうで雰囲気が本当にいいですね。子育て支援制度がお母さんたちにとってますますお仕事のやりやすさにつながればいいと思いました。ありがとうございました。


今治タオル子育て支援制度について
https://www.imabaritowel.jp/news/news3566

渡辺パイル織物株式会社 オフィシャルサイト
https://www.watanabe-pile.co.jp/

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